10歳のマリアのブログ

~~直腸がんで抗がん剤治療中の夫に寄り添う妻の気づき~~

第5回「夫の直腸がん闘病生活と寄り添う妻(10歳のマリア)」~「痛み」の対処方法~、~夫のたくましさ~

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~「痛み」の対処方法~

先回は、「X線放射線治療」と「温熱療法(ハイパーサーミア)」によって、スケジュール表が一杯になったことまでを書きました。来月から、いままで経験したことのない治療がスタートします。これが楽しいチャレンジであれば、どんなにか良かったでしょう。しかし、まずは治療法があることを素直に喜びたいと思います。

 

今回は、我が家の「痛み」の対処方法について書きます。

 

夫は、今回の「X線放射線治療」と「温熱療法」は今の治療の中のベストの選択なので、副作用の心配や恐れは感じないと言います。夫の関心事は、治療の結果「痛み」がどれくらい軽減されるかだけだと言います。これは、治療にあたってくださる医師を全面的に信頼しているからこそだと思います。

 

やはり、家族としても「痛い、痛い」と言われると辛いです。代わってあげることもできません。こんな時の二人の申し合わせがあり、痛みを数字で記録していくという作戦をとっています。最大「10」として、今はどれくらいか、その時に飲んだ薬と時間を表にしていくのです。客観的に判断できるようにすると、痛みに支配されるのではなく、こちらから支配していくような感覚になります。幸い、今はがん患者用の医療用麻薬が功を奏して、最高でも「3~4」に収まっています。

 

そして、遠慮なく声にだして「痛い」と言ってもらっています。足の裏をマッサージすると痛みが和らぐようです。これはとても良い発見でした。長い時間でなくても、少しの時間でもマッサージの効果はあるようです。また湯たんぽも効果があるようです。

 

~夫のたくましさ~

私は、がんに罹患すると、まず「なぜ私が?」という否認から始まり、怒りや恐れを感じつつ、だんだん諦め「受け入れよう」という受容の気持ちに変化していくのかなと思っていました。

 

しかし、夫は直腸がんに罹患して、いきなり、がんになったのだから仕方ないと受け入れたのです。しかも「自分自身の体で実験しているようなものだ、がん細胞が自分の体の中でどのようになっていくか、治療の効果はどれくらいあるのかを見極めることができる。不安は全く無いよ」と言います。

 

悪性リンパ腫の基礎研究に長年従事してきた科学者ならではの感性なのでしょうか。現役時代は、世界を相手に競争していて、いくら良い実験をして良い結果が出ても、論文発表がほんの少し遅れただけで、それがまったく評価されないという厳しい現実があると教えてくれたことがありました。そのストレスに比べれば、人生の終盤になって、がんに罹患した自分自身の体で実験ができるのは、かえって幸いだと感じているのかも知れません。

 先回、【 樋野興夫先生の「ことばの処方箋」の中に、

「人生いばらの道 されど宴会」があります。これは、聖書(箴言15:15)「悩んでいる者の日々はことごとくつらく、心の楽しい人は常に宴会をもつ」に由来する。

と紹介しました。

夫には実にユニークな面があり、闘病生活においても、いかんなく発揮しています。大好き歌があって、讃美歌の「主よ みもとに」と「慈しみ深き」、それと「 You Raise Me Up 」の曲を時々口ずさんでいます。しかも、それに独特の節をつけたり、替え歌にしたりと楽しんでいます。それが、結構上手い! そして笑えるのです。このユニークな替え歌は、ストーマ生活になってから歌うようになったような気がします。

 

これぞまさしく、「人生いばらの道 されど宴会」です。楽しい歌で「痛み」はなくならなくても、十分効果があるように思えます。

 

樋野興夫先生の本の中に、「人間もがん細胞のようにたくましく生きればいいのです。~~がん細胞のように、自分の枠に固執せず、環境に応じて自由自在に変化していく生き方も取り入れましょう。~~誠実に一生懸命生きれば、やがて地球をも変えられるかもしれません。」とあります。

 

「地球を変える力」までとはいかなくても、夫の抗がん剤治療の結果が、これからの多くのがん治療に活かされれば、それだけでも大いに価値ある人生のような気がします。

 

次回に続きます。