10歳のマリアのブログ

~~直腸がんで抗がん剤治療中の夫に寄り添う妻の気づき~~

「長島愛生園の旅の思い出 その4:愛カフェでの出会い」~「夫の直腸がん闘病生活と寄り添う妻(10歳のマリア)」第80回~

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長島愛生園の日帰り旅行から10日ほど経ちました。「あの時、思い切って出かけて本当に良かった! 貴重な体験だった!」と、夫はとても喜んでいます。帰宅してからも、愛生園についての話題が尽きません。

旅の途中から両足にかなりの筋肉痛がありましたが、がんの痛みそのものは薬の服用で抑えられたことはラッキーでした。闘病中の夫にとっても、今回の長時間の旅行は実り多いものとなったと言えます。

一番の思い出では、愛カフェ(*1)に参加させていただき、高齢の入所者の方々と直接交流する機会を得たことです。入所者の皆さんに「遠いところからよく来てくださった。」と、にこやかに迎えていただけました。

愛カフェに参加された入所者は10名ほどでした。その中の3名の方とお話しできましたが、皆さん気さくに体験談を語ってくださり、その優しい話し方や愛に満ちた人柄に感銘を受けました。

中尾伸治さんのお話しから

89歳の愛生園で自治会長をつとめる中尾伸治さん(*2)からは、体験談ばかりでなく、これからの愛生園の課題についてもお話を伺うことができました。

これは、中尾さんと一緒の貴重な写真です。

中尾さんは、現在89歳です。ハンセン病が完治してからも30年前に脳腫瘍が見つかり手術を受けたそうです。また、昨年は肝臓がんの手術を受け現在治療中とのことです。自分自身が様々な病気に罹患しても、自治会長(*2)としての責任感や、物事を俯瞰的にとらえる姿勢に心打たれました。愛生園の歴史を風化させないよう、療養所を世界遺産に登録しようと運動(*3)を進めているそうです。

14歳で愛生園に入所した時のことも淡々と語ってくださいました。

「自分の病気のことを理解できていないまま、親元から離され、愛生園に入り、包帯でぐるぐる巻きの人たちを見て恐怖を感じた。島流しにあったんだと、その時自分の病気のことや状況がわかった。自分よりも小さい子供もたくさん入所していて、入所している大人が親代わりとなり、共同生活を余儀なくされた。」

生活環境ががらりと変わってしまうという苦しみや悲しみに直面したした人たちの中に、たくさんの小さな子供たちもいたことに衝撃を受けました。

入所者で行った作業

そのような状況に中でも、入所者同士で助け合いながら生きる方法を生み出していった人々のことも話してくださいました。

「満足に食べることもできなかった子供時代、畑を開墾したり、道路を整備(*4)したりと、入所している大人たちに交じっての生活だった。多い時は1700人位の入所者がいてぎゅうぎゅう詰め状態、住む家もないので自分たちで作り、病気を押しての自給自足状態だった。」

今回の愛カフェが始まる前、愛生園内を車で移動しながら撮った写真の中に、中尾さんのお話しに重なるものがあります。道路整備の「一朗道(いちろうどう)」(*4)、生活居住区の「あけぼの団地」です。

 

 

中尾さんのお話を伺って、ハンセン病の患者たちが過酷な経験を強いられていたことを知り、心が痛みます。その時代を生き抜いた人々の強さに深い敬意を抱きつつ、お会いした皆さんから勇気と力をいただきました。

愛生園の歴史が埋もれてしまわないように、中尾さんたちの運動を通して世界遺産に登録される道が見えてきますように願っています。私自身も夫と共に学びを深めていきたいと考えています。また、愛生園の歴史をできるだけ多くの人々に知ってもらいたいと思います。

愛生園に入所している方の平均年齢は88歳、数は年々減少しており現在86人となっているそうです。今ご健在の方々の日々が、平和で穏やかでありますようにと祈ります。

【注釈】

(*1)愛カフェ 語らいの場

場所:長島愛生園内にあるハンセン病療養所 日出会館2F
   〒701-4501岡山県瀬戸内市邑久町虫明6539
日時:毎月最終火曜日の13:30~14:30
事前申し込み必要 0869-25-0321
参加無料
交通アクセス(車)     岡山ブルーライン虫明ICから車で約10分
交通アクセス(公共)   JR邑久駅から長島愛生園行きバス約50分
長島愛生園見学クルーズのお知らせ  見学バス運行のお知らせ(こちら

(*2)愛生園で自治会長をつとめる中尾伸治さん 参考(こちら

ハンセン病制圧活動サイト People / ハンセン病に向き合う人びと

長島愛生園入所者自治会のホームページ(こちら
新任のご挨拶 2011年2月1日
長島愛生園入所者自治会  会長:中尾伸治

(*3)療養所を世界遺産に登録しようと運動  参考(こちら

朝日新聞 「国立ハンセン病療養所、後世にどう残すか課題」2020年10月27日の記事

(*4)「一朗道(いちろうどう)」

入所者、久保田一朗が先頭になって切り開いた道路の解説です。

(解説 中尾伸治さん)   2021/05/19


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これまでの記事

◎長島愛生園の旅の思い出 その1:写真コーナー(こちら

◎長島愛生園の旅の思い出 その2:新幹線とレンタカー(こちら

◎長島愛生園の旅の思い出 その3:写真コーナーの記事は(こちら