10歳のマリアのブログ

~~直腸がんで抗がん剤治療中の夫に寄り添う妻の気づき~~

「娘から父へ(娘の寄稿文)」~「夫の直腸がん闘病生活と寄り添う妻(10歳のマリア)」第50回~

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「10歳のマリア」のブログを立ち上げ、今回で節目の「第50回」を迎えました。目標にしている100回までの折り返しです。今年の2月に立ち上げ、良くここまで続けて来れたものだと自分自身驚いています。

未熟な文章にもかかわらず、毎回皆様から温かい励ましをいただき、心から感謝しています。

夫の直腸がん罹患は、家族にとっても大きな出来事です。娘も息子も独立して新しい家庭を築いていますが、「10歳のマリア」のブログを通して家族の話題も増え、絆が深まったように思います。

文章を書くのが苦手な私を支えてくれる娘の存在は大きいです。娘は、私の記事の手直しを丁寧に説明を入れてサポートしてくれます。また、複雑なブログの仕組みにも詳しいので分かり易く説明してくれるのでとても助かっています。

50回の節目に、娘が父への思いを文章にしてくれました。以下に娘からの文章を載せます。

 

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「家族の朝(娘の寄稿文)」

「よぉーい、ドン!」

小学生の頃は、「よぉーい、ドン!」という元気な父の掛け声で朝が始まった。弟が文字通り飛び起きて、父と競い合いながら騒がしく着替え始める。食卓の椅子に座って先に「いちばん!」を宣言したほうが勝者、そんなルールだった。私は競争には加わらず、のんびり着替えて食卓へ向かう。年長者の余裕である。

父に似て集中力のある弟は、これまた父に似て集中してしまうと他のことができなくなる子どもだった。マイペースさも相まって、なかなかスムーズに朝の着替えができない。そんなわけで両親が編み出したのが、冒頭の朝の「おきがえ競争」だった。のんびりしている割に負けず嫌いな弟はまんまと術中にハマり、スムーズに着替えられるようになった。

おきがえ競争より少し前、幼稚園児の頃は、私が父を起こしに行った。父はただ起きてくるだけでなく、寝ているフリをして突然「ばあっ」と目を開けたり、本を読んでくれたりした。読んでくれたのは絵本ではなくアメリカ民話で、父が子供の頃読み込んだ本だった。心臓を食べる魔女の話を臨場感たっぷりに読み上げるので、ずいぶんと恐ろしい思いをしたものである。

父の出張でもないかぎり、朝ごはんは家族全員で食べた。学校で何があったとか、習い事がどうだとか、他愛もない話をとりとめもなく話す。ニュースについて父から「どう思う?」と聞かれ、考えて答えることも多かった。私はさっさと答えるが、弟は時間をかけてじっくり考える。そして食事も終わろうというときに突然意見を述べるものだから、なかなか食事が終わらない。それでも7時半にはご飯を食べ終わっていたので、ずいぶんと朝の早い家族だったのだと思う。

正確には思い出せないが、ある頃から父がなかなか起きて来なくなった。疲れているのは明白だったので「寝かせておいたら?」と言う私に、母は「起こしてきて」と言う。「お父さんは、朝ごはんは絶対に家族で食べるって決めてるから」と。仕方がないので再度起こしに行き、朝ごはんのメニューを伝える。父の好きなものは必ず食卓に並べられるので、それを伝えると「起きます!」と元気に寝床から出てくる。私の食い意地は父親譲りだわ、と思いつつ、父の椅子に陣取った愛犬さくらを抱き上げたものだ。

そんなふうに思い出すと、家族の思い出は朝のことばかりだ、と気がついて、ようやく思い至る。

父にとって、家族の時間は朝しかなかったのだ。私たちが幼い頃、父は帰りが遅かった。子どもたちが寝てから帰ってくるのは当たり前だった。早く帰っても、書斎に籠もって夜中12時まで仕事をして、朝3時に起きて仕事を再開することもあった。そんなことをしていれば朝に起きられないのは当然なのに、それでも必ず起きて、一緒に朝ごはんを食べた。

父は昔から何度も繰り返した。子どもたちは宝であって、社会からの預かりものだと。父は言葉の通り、激務の中であっても、子どもたちと向き合う責任を決して放棄しなかった。

現在、父が受けているがん治療は激しさを増し、痛みとの闘いは過酷なものとなっている。それでもただただ、治療してくださる医師を敬い、関わってくださる医療従事者の皆様に感謝し、がんカフェで受け入れてくださる方々との出会いに喜び、孫を慈しみ、付き添う母に感謝と愛情を述べ、自分がいないであろう未来に希望を持ち続ける姿は立派である。

娘としては、痛みが少しでも和らぐよう祈るばかりではあるが、父はきっと闘い切るだろう。そういう人を父に持ったことは私の誇りであり、孫にとっては自慢のじいじである。

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娘が書いてくれた原稿を読み、夫と二人で当時を楽しく思い出しました。

ひょうきんな夫は、「よぉーい、ドン! と言ったらスタートだからね」と言って息子を驚かせたり、すっかり着替え終わってから「よぉーい、ドン!」と起こしに着た夫を見て息子が固まって動けなくなったこともありました。競争に勝った方が「い―ちばん!」と一番コールをし、人差し指を高々と掲げた様子もありありと思い出し、夫はその時の様子をジェスチャーを交えて懐かしがっています。

『全力を尽くして心の中で「そっと」心配する どうせなるようにしかならないよ』

樋野先生の本「明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい

に紹介されている、心に迫る勝海舟の言葉です。

これからも聖句や樋野先生の言葉の処方箋を、写真と共にご紹介し、皆様に少しでもお役に立てるようにと思っています。

めざせ、100回記念自費出版です!

 

次回に続きます。