昨年の9月に受けた放射線療法のおかげで痛みが和らぎ、比較的体調が良い日が続いています。今年に入って3回目の通院となった先日、2週間に一回の抗がん剤点滴治療を受けてきました。
抗がん剤点滴を受けるととても疲れるので、病院からまっすぐに帰宅しベッドに横になるのが習慣でした。抗がん剤は、がん細胞を攻撃する一方で、正常な細胞にも影響を及ぼすことがあります。そのためなのか、抗がん剤治療を受けると体力が消耗し、気分もすぐれなくなります。
ところがこの日はいつもと違い、治療後に疲れが出ることもなく、夫はスーパーに立ち寄って買い物をしたいと言い出しました。抗がん剤点滴治療直後に、これだけ体力が残っているのは珍しいことです。もしかしたら、初めてのことかも知れません。
スーパーでカートを押して、好きな食材を選んでいく夫の後ろ姿を見守りながら、こんな日もあるのかと信じられない思いでした。
一見ありふれた買い出しでも、普段ベッドに横になっている夫のことを思うと、特別な光景です。しかも抗がん剤点滴の帰りですから、余計印象に残りました。大袈裟ですが、貴重な時間でした。何気ないことに喜びを発見できた気分です。
夫とのたわいもない会話
実は、夫が買い出しをすること自体、我が家ではとても珍しいことなのです。がんに罹患する前、それどころか出会った当初から、夫は、食べることには意欲的ですが、食料の買い出しにはあまり興味がありませんでした。がんに罹患してからはなおさらです。私も夫に手伝ってほしいと思ったことはなく、買い出しはすっかり私の役割になっていました。
がんに罹患する前の夫とのたわいもない会話を思い出しました。「何か一つあなたにお願いできるとしたら、いつか一緒にスーパーに買い物に行って、重い荷物も持って欲しいな。」夫は、「それくらいはできるよ、重い荷物ももちろん。」と答えてくれていました。
痛みが緩和しているとはいえ、足腰が弱っている夫に重い荷物をお願いすることは現実的ではありません。ですが、一緒にスーパーに買い物に行くことの願いは叶いました。
この日のような何気ないことにも幸せを感じられるのは、ありがたいことであり、幸いなことだと心から思います。
いつも喜んでいなさい
骨に転移した夫の直腸がんは治らないでしょう。これからがん細胞がどんなに暴れても、その時はその時だと思っています。
そんな現実を受け入れつつ、次の聖句を思います。
いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。どんなことにも感謝しなさい。これこそ、キリスト・イエスにおいて、神があなたがたに望んでおられることです。
テサロニケの信徒への手紙Ⅰ 5章16~18節
この聖句を心に刻んで、これからも夫と共に闘病生活を送っていきたいと思います。
次回に続きます。