10歳のマリアのブログ

~~直腸がんで抗がん剤治療中の夫に寄り添う妻の気づき~~

Steve Jobsの話「愛と喪失:Love and Loss」「死:death」:リンパ腫研究の現状と未来への展望~夫の直腸がん闘病生活と寄り添う妻(10歳のマリア)第65回~

ブログランキング・にほんブログ村へ

~日本リンパ網内系学会50周年記念誌発行(2010年)からの引用~

夫の現役時代に投稿したエッセイ集

『リンパ腫研究の現状と未来への展望』 
~日本リンパ網内系学会50周年記念誌発行~その内容を次の5つの記事に分けて紹介しています。

5. IT革命がもたらしつつある変化  Steve Jobsの話

🍁「点と点をつなぐ:Connecting the dots」
🍁「愛と喪失:Love and Loss」「死:death」

6.死についての私自身の体験

🍁 高橋英伸先生(享年39歳)
🍁 大星章一教授(享年54歳)
🍁 Stanley J Korsmeyer博士(享年54歳)

 

尚、冒頭の 1.~4は、別にまとめてあります。その記事は、(こちら

最後の 7.も、順次まとめます。

5. IT革命がもたらしつつある変化 Steve Jobsの話」

🍁「愛と喪失:Love and Loss」「死:death」

二つ目の「愛と喪失」については、彼自身が体験した失望感、喪失感と愛についての話だ。彼は、マッキントッシュI.IIを世に出した後、10年ほどの空白期問を経て、iMacを送り出し、その後も画期的なコンセプトを持つiPod, iPhone, iPadを次々と世に送り出している(図3)。

今、大きな話題となっているiPhoneiPadを作り出した人がSteve Jobsであると言えばわかり易いかもしれない。彼は、20才の時に友人のウォズニアックと二人で、両親の車庫でマッキントッシュIを作った。それは、10年後、4000人の従業員の20億ドル(2000億円)の価値を持つ会社に成長した。しかし、30歳になる少し前に、自らが作った会社の役員会で解任を言い渡され、実際にクビになった。自分が作った会社からクビを言い渡され、追い出されたので、とても失望して、シリコンバレー(サンフランシスコのPalo Alto周辺のコンピュータ産業の中心地)から、逃げ出したいと思ったと言っている。しかし、数ヶ月すると、何か自分のなかで湧き上がるものがあり、自分は自分がやってきたことがやはり好きだということを確信し、再び仕事を始めたと言う。

彼は、「自分が作った会社をクビになったという事実は、彼の人生で起こったもっともよいことの一つであった」と言っている。全く最初からスタートするので、成功し続けなくてはならないという「成功者の重圧」から解き放たれ、何をやってもかまわないという「初心者の軽い気持ち」になれたと言うのだ。

解任された後の5年間で、NeXTという会社を始め、Pixerという会社を作り、すばらしい女性と出会い、その人は彼の妻となった。Pixerはトイストーリーで有名で、もっとも成功したアニメーション会社となった。現在はウォルト・ディズニー株式会社に買収されている。驚いたことに(Remarkable turn of events)、NeXTはアップルに買収され、彼は再び、アップルに戻ることになった。このアップルを離れていた10年間がマッキントッシュIIからiMacまでの空白期間だ(図3)。彼が再びアップルに戻って以降のアップルでの革命的な商品作りの基盤となったのが、NeXTで培った技術だったらしい。彼は言う。

「私は妻とすばらしい家庭を築いていますが、アップルをクビになっていなかったら、これらの一連のことは何一つ起こらなかったでしょう。」「喪失や失敗は、時には、とても苦い薬だけれども患者はそれを必要とするのです。人生では、時としてレンガで頭を殴られるようなことが起こるだろうけれども、信念を放り投げてはいけない。自分のやっている仕事が好きだという気持ちがあったから、私が挫けずやってこられました。」「君たちもこれから仕事が人生の大きな部分を占めてくるけれども、自分が本当に心の底から満足を得たいなら、自分が心から好きだと信じることをすることです。もしまだ見つけていないならば、探し続けてください(Keep looking)。落ち着いてしまってはだめです(Don’t settle)。」

 

三つ目のこととして、死について話を始める。

彼はStanfordでのスピーチの1年前つまり2004年の6月頃、膵頭部のがんと診断され、医師からあたかも「死ぬ準備」をしなさいというようなことを言われたらしい。彼は次のように言います。「10年くらいかかって子供たちに伝えようと思っていたことをわずか数ヶ月のうちに伝えなさいと言うのです。幸いなことに、そのがんは手術可能で、今、自分はこうして皆さんの前に立っています。死を前にして思ったことは、すべての生物は必ず死ぬということです。同時に、死は生物が作り出したもっとも優れた発明だったかも知れません。古いものは死によって取り去られ、新しいものに取って代わられる。死を前にすると、「もっとも大切なことは何か」がはっきりします。もっとも大切なこと以外はどうでもよくなるのです。あなたたちは、今、新しいものだけれどもやがて古くなり取り去られる。それが紛れもない事実だ。あなたたちの時間は限られているので、誰か他の人の人生を生きてはいけない。誰かの考えにとらわれて生きてはいけない。自分のもっともしたいことに集中するべきだ。それ以外はすべてどうでもよい。」

彼は自分の人生の経験から、3つの言いたかったメッセージを述べた後、次のように続けた。

「自分が若い頃、"The Whole Earth Catalogue(全地球カタログ)”というのがあって、それはポラロイドカメラ、タイプライターとはさみで作った35年前の今のグーグルの雑誌版のような物だった。

何回か版を重ねた後、その最後の版に、メッセージとして、Stay hungry, stay foolish(求め続けなさい、謙虚でありなさい)という別れの言葉(Farewell message)がサインとともに書いてありました。

私は自分自身にそのように願ってきましたし、今、この言葉をあなた方に願っています。

“Stay hungry, stay foolish"」

このようにSteveJobsの話は終わる。

 

💛💛💛💛💛💛💛💛

スティーブ・ジョブズは、指でタッチして、文字入力や画面を大きくする機能を備えたiPhoneiPadを作った天才です。彼なくして、今のスマホ文化はなかったのではないでしょうか。その天才も、すい臓がんで2011年に56歳の若さで亡くなっています。世の中を変えるような大きな贈り物を残してくれたと思います。同時に、"Stay hungry, stay foolish" の言葉もとても印象に残ります。

💛💛💛💛💛💛💛💛

 

次回から、夫の死生観を形作った三つの体験談を順番に紹介します。

6. 死についての私自身の体験

🍁 高橋英伸先生(享年39歳)

🍁 大星章一教授(享年54歳)

🍁 Stanley J Korsmeyer博士(享年54歳)